| コラム | ||||||||||
| C 01.構造偽装事件の背景について | ||||||||||
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構造偽装事件の背景 |
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世間を騒がせている「構造偽装事件」について各方面でいろいろ語られていますが、建築意匠設計者の一人として私も一言。 この大きな事件はマスコミで繰り返し報じられている通り、建設費用を安くする(=販売価格を安くする)ために嘘の構造計算を行なっていたという事件です。 建築物の場合、コストを左右する条件には本当に多くの要素がありますが(立地条件・規模・デザイン・構造・仕上げ・設備 ・・等)、中でも建築コストを大きく支配している要素が「構造躯体」です。 今回の事件では鉄筋の本数を減らすという事が具体的な手段として使われていますが、もともと鉄筋は値段が高い建築資材であり、特にここ数年は中国の造船需要に引っ張られて鉄の材料価格が大きく高騰していたので、鉄筋の本数を減らすという幼稚な手口で建設コストを削減しやすかったと言う背景もあると思います。 日本は世界の中でも耐震基準が厳しい国なので、他国に比べてこの構造躯体にかかるコストの割合が大きいと思います。 今回の構造偽装事件は、「建設コストを大きく下げるには構造をズルしてしまうほかに方法が無い」ということが良くわかっていた素性の悪いプロの引起こした事件だと言えるでしょう。 この事件により「建築物の構造躯体には本来お金がかかる」という事が世間一般の人にも広く認知されるようになったわけです。 いずれにしても、今回のこのケースは「構造躯体の合理化」に名を借りた稚拙な手法による犯罪行為という事で、かなり特殊な事例だとは思いますが、その背景には現在の分譲マンション業界を取り巻く根深い問題が潜んでいるように思えます。 近年とにかく安くないとモノが売れないと言う社会的な風潮が蔓延してしまい、分譲マンションについてもその時流に飲まれ凄まじい安売り競争が起っていました。 実はその競争の激化は10年近く前から始まっていたと思います。 私は独立前に勤めていた設計事務所で1997〜1998年頃に、ある大手マンションデベロッパー発注の分譲マンションの実施設計を所員として担当(補佐)した事が短期的にあり(基本設計や現場監理は担当しませんでしたが)、当時の分譲マンション業界の一端を覗いていたので、その頃の事を少し書いてみたいと思います。 「安くするために鉄筋を減らせ」 この一言に、マンション・デベロッパーの建築に対する感覚の全てが象徴されています。 彼らは自分達の売っているモノを「人の財産」としては考えていないようで、単に「商品」とししか見ていないという感覚があると思います。 また、これに乗せられてしまうモラルのない設計事務所や建設会社にも、当然腹が立っています。 まじめにやっているその他多数の同業者が本当に迷惑しています。 |
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分譲マンションの価格競争の激化(マンションデベロッパーの感覚) |
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1997〜1998年頃から、それまでよりもっと安い分譲マンションで勝負しようという分譲マンション・デベロッパー(販売主=不動産屋)が現れ始めました。 当時まだバブル崩壊後数年しか経過しておらず、土地の値段が年々下がっていたと言う事情もありますが、多くのゼネコン(建設会社)やマンションデベロッパーの経営が危機に陥った頃の話です。 RC造やSRC造のマンションの建設コストは、バブル全盛期には坪当たり100万台後半〜200万円だったのですが、バブル崩壊で建設コストが一気に下がり「坪当たり80〜100万円」程度で推移していました。 そのような時に「坪当たり60万円台始め」などという当時としても安い坪単価で計画すると言い出すマンションデベロッパーが現れ始め、その話を聞いたときは本当にびっくりしたのを覚えています。 マンションデベロッパーが分譲マンションを作って、それを売り易くするためにまず考える事は基本的に、
といった所だと思いますが、占有床面積(分譲床面積)はあまり小さくしてしまっては部屋数が減ってしまうため売りにくくなりあまりスペックダウンできません。 今も旧態然としてそのままかもしれませんが、当時多くのデベロッパーは、2LDK よりは 3DK・4DKのほうが売り易い(部屋が広い事よりも、部屋数が多いが売りやすい)と考えていました。 いまだに分譲マンションのキッチンの広さが3〜3.5帖程度と一律に狭いのもその影響です。 リビングの床暖房などの設備の充実も「売るため」には必要なスペックです。 デベロッパーは、販売用パンフレットでアピールできる部分についてのスペックダウンは決して行いません。 あと残る大きな課題は販売価格です。 外装材や内装材等の目に見える仕上げ材料については、それまでも高いものは使っていないのでコストの下げどころがありません。 土地価格の下落がありましたがそれでは十分ではなく、さらに販売価格を下げるには、設計や建設にかかるコストを下げるしかありません。 その頃から、設計事務所がデベロッパーからもらえる設計監理料はずいぶんと安かったと思いますが、大きく建設コストを下げるには前述したように「構造躯体」を合理化するしかありません。 もともと無駄をなくして建設コストを下げる(=販売価格を下げる)という考えは当然の事としてデベロッパーにはありましたが、しかし構造をいじめてまで安くすると言う考えまではなかったと思います。 仕事があまりない不況の中では、施工者サイド(ゼネコン)も大きな儲けが無くても仕事が無いよりはマシといった感じで安い単価の仕事を受けていたので、マンションデベロッパーがそこにつけ込んだという事情もあります。 私が意匠設計を担当した分譲マンションは、記憶では坪あたり60万円半ばくらいの単価を目標にしていたと思います。 (ちなみに、スケールメリット=施工面積が広いほど坪当たりの単価が下がる があるため、一戸建て等の小規模建築とは元々の単価が違います) その実施設計を終えた後少しして私は所属していた設計事務所を去ったため、それ以後デベロッパー発注の分譲マンションの設計には一切関わっていませんが、その2〜3年後にあるゼネコン関係者と話をする機会があった際に、「マンション建設の坪単価は更に下がり続けていて、建設コストが「坪当たり55〜60万円」は当たり前、中には坪当たり50万円を切る(なんと木造より安い!)物件も時々出ている」というとんでもない話を聞かされました。 明らかにコストダウン幅が普通ではなく、適正コストを割り込んでいると思いました。 かなり短期間で分譲マンションの建設コスト競争が激化していたようです。 それからまた4〜5年が経過し今回の偽装問題の報道を見た時には、こんな事までやってしまう業者が現れるほど競争が激化していたんだな・・・と呆れました。 事件発覚までそのような過当競争が業界内で続いていたのでしょう。 ゼネコン関係者から聞いた建設コストのその話から、明らかに適正コストを割り込む価格で建てられたここ数年間の分譲マンションのいくつかは、どこかしら無理している所があるだろうという想像ができたので、きっと大きな地震が来た時に倒壊するマンションが何棟か発生するような事態が起こり、初めて社会問題化するのだろうと想像していましたが、意外な形で社会問題化しました。 今回のこの事件は「構造躯体の合理化」に名を借りた犯罪行為という事で特殊な事例だとは思いますが、以上のような事がその背景としてあったのです。 ですから、偽装マンションを販売した当事者も、その業界の雰囲気を当然良く知っていたはずです。 |
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正規な構造躯体の合理化方法 |
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マンションに限らず(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造(RC造)・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造)の如何に関わらず)構造躯体の無駄を省かなければ建築物全体のコストを合理化する事は出来ませんが、構造躯体を合理化するには正規な構造設計の方法があります。 マンションの構造計算は構造設計事務所で通常下記の手順で行われます(私は構造設計は専門でないので簡単に)。 構造設計事務所ではデベロッパーや意匠事務所の考えたプランを元に、少し余裕を見た柱や梁の大きさ(太さ)を仮定します(仮定断面の設定)。 床や壁の厚さについては、これが薄いと住人の騒音クレームにつながりやすいので売り主のデベロッパーサイドが厚みを指定します。 これらにより出された部材の重さや、仕上げ材・設備等の重さを計算して建物の自重を出し、法規で定められた方法で、自重や用途に耐えられる構造かどうかのチェック(長期加重)や、風や地震等の外力(短期加重)に対して耐えられるかどうかのチェックを行いながら構造躯体を設計していきます。 その中で仮定した部材寸法が適正かどうかの判断が行われたり、部材内部の鉄筋量や鉄骨量(SRC造の場合)が決められます。 この部材設計は建物上部から始まり、次第に下層部へ移行し、最後に地中の構造体(地中梁・基礎・杭)の設計を行います。 これで一通り構造計算が一度終わるのですが、構造計算のとっかかりとなった部材寸法があくまで「仮定」であり、まだ余裕のある寸法なので、一度出た計算結果に基づき部材寸法や鉄筋量を見直す事が出来ます。 これを何度か繰返すと、合法的にどんどん構造躯体をスリム化していく事ができ、結果として部材寸法や鉄筋・鉄骨量を合法的に少しづつ減らせます。 最初の計算のまま終わらせると多少無駄が残り、いわゆる経済設計とは言えないのですが、見方を変えれば地震に対しての余力(耐震性の余裕)があるとも言えます。 過剰なスペックの構造設計を避けるにはある程度構造躯体の合理化検討が必要ですが、度を超すと地震に対しての余力をそぎ落としてしまう事になりかねません。 しかし最近の分譲マンション設計の場合は建設コストを押さえるのが至上命題のようなので、たぶんここ数年に完成した多くの分譲マンションは、基準値すれすれの耐震性能しか持っていないでしょう。 事業主であるマンションデベロッパーが建物の耐震性をどれだけ重視していたのか疑問です。 構造設計担当者は設計業務形態の中では一番下請け的な立場にいる事が多く(ゼネコン内部の人間だったりすることも多いと思います)、設計業務の発注者であるデベロッパーに対し、「もっと余力を持たせるべきだ」というような構造設計担当者の考えを主張する事がどの程度可能なのか疑問です。 仕事が全体的に減っている中ではゼネコンもしかりです。 1997〜1998年以前の分譲マンションの構造設計には、地震に対する余力(耐震性の余裕)がまだ盛り込まれていると思いますが、ここ数年の価格重視の風潮はそれが許されなかったのだと思います。 安売り分譲マンションは「徹底した構造躯体の合理化設計」+「不況の中で安い単価で受注するゼネコン」の組み合せで建てられてきたと思いますが、激しい競争の中で建設コストを下げる事のみ重視した、事業主である分譲マンションデベロッパー達がこうした事を押し進めていったのだと思います。 最近ではTV-CM等で「建設現場が見学できます」という宣伝を行っているデベロッパーもあるようですが、全くの茶番です。 コンクリートが固まって型枠が外された状態の現場を見せられても、すでに構造躯体の工事が完了してしまっているわけでどうしようもありません。 問題なのは、その固まったコンクリート躯体の中の、鉄筋・鉄骨の品質・本数・太さ・施工状態や、生コンクリートの品質・打設状況と養生の仕方、あるいは、型枠の設置状況や外した時期と外され方・・・その他諸々だからです。 |
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最後に |
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| └─業務内容 | |||||
| A 01:当事務所の業務内容 A 02:当事務所の設計方針 A 03:仕事の流れ(打ち合わせの開始から竣工まで) A 04:設計監理料について A 05:意匠事務所・構造事務所・設備事務所 A 06:家相について |
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| └─アドバイス | |||||
| B 01:地盤調査・敷地の履歴調査について B 02:敷地の新規購入の際に気をつけたいこと B 03:木造の外張り断熱工法について B 04:木造住宅(在来工法)のリフォームについて B 05:ツーバイフォー・マンションのリフォームについて B 06:車イス対応のリフォームについて B 07:木製バルコニーについて B 08:無垢フローリングについて B 09:新しい造成地の地盤について |
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| └─コラム | |||||
| C 01:構造偽装事件の背景について C 02:国産木材と自然環境 C 03:自然素材ブームと環境 |
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