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山尾建築設計事務所
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B 08無垢フローリングについて
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無垢フローリングについて

Q:

無垢のフローリングは素材として魅力的なのですが、反り等が発生するような気がします。 メンテナンス等の対策はあるのでしょうか? 又、床暖房を備える場合はこの素材は使えるのでしょうか?

これは以前に私が受けた相談です。 一般的に住宅建築で多く使われている合板フローリングと違い、無垢フローリング材は一目で違いが分かるその質感と、使い込むほどに出てくる独特な深みのあるツヤが何より最大の魅力ですが、天然木であるがゆえ「あばれ」がどうしても出てしまいます。 木の「反り」や「伸縮」をこう呼んでいます。

無垢の木は温度や湿度に敏感なのである程度しょうがありません。 乾燥すると縮んだり反ったりして、湿気が多いと伸びてしまいます。 「あばれ」は築後数年たってから出るのではなく新築時が一番激しく出ます。 施工中からその現象は起こります。 年間を通してくり返し起こり、しだいに木が「枯れて」その現象は納まっていきます。

具体的にどのような事が起こるかというと、梅雨〜夏期は湿度が高いので木材は伸び、フローリング材の継ぎ目がつまったり、ムクってくる事もあります。 これは短辺方向・長辺方向共に起こります。
 
冬期は、室内の暖房機具により熱せられ乾燥してくるので、逆
縮んで継ぎ目に隙間ができたり、反ったりします。
 
中間期(春・秋)は温度湿度とも具合が良い、というか変型の移行期なので、「あばれ」が目立ちにくい季節だと言えます。

反り
(冬期)
ムクり
(梅雨〜夏期)

「あばれ」を出にくくする工夫としては、

  • フローリング材の幅をなるべく小さくする。
    〜樹種によりますが、「あばれ」てもその幅が10cm以下なら程度が少ないかもしれません。しかしこの寸法でもある程度はあばれますし、幅をこれ以上小さくすると意匠としてどうなのか疑問です。 幅15cm以上の材料はかなりあばれると覚悟するべきでしょう)
     
  • つなぎ目が本実(ほんざね)加工された材料を使用する。
    〜この処理は製材に手間がかかりますが、ある程度「あばれ」を抑えてくれます。
  • 乾燥した材料を使用する。
    〜フローリング材として製品化されているものには、熱処理で強制的に乾燥させている材料もありますので、なるべくそのようなものを使うべきでしょう。
     
  • 裏面に溝を切っているものを選ぶ。
    〜フローリング材として製品化されているものには裏面に溝を切り、反り方をなるべく押さえようとしているものがあります。
     
  • 「あばれ」にくい樹種の材料を使用する。
    〜「あばれ」が起こりにくい樹種としては「ヒノキ・ケヤキ」等で、これらは固く耐久性もあります。 ケヤキのフローリング材というのはあまり見かけませんが、この2つの樹種は数寄屋等の和風建築では高級床材として「地板」等に現在も使われています。
     次に比較的「あばれ」にくい材料としては「松」があります。 松といっても種類が多く、米松やカラ松等はあばれやすいようです。
    「あばれ」が起きやすい樹種としては「ナラ・タモ・杉・ブナ」等があります。
     
  • 「反り」や「伸縮」の他に、場合によっては「ねじれ・割れ」等が起こる可能性もあります。
     

無垢フローリングの仕上

無垢フローリングの仕上には、

  • 床用クリアラッカー、
  • 床用ワックス
  • 床用浸透性塗料

等の塗料を塗り、仕上とします。 多くのメーカーからいろいろな材料が発売されています。 汚れ防止や、水分等を床にこぼしてしまった場合にシミならないようするために必要です。

最近は自然素材を原料とした塗料を使う事が多くなったようです。 「柿渋」等の日本の伝統的な塗料や、「オスモ」や「リボス」等といった輸入塗料がありますが、比較的高価な塗料と言えるでしょう。 柿渋は鉄部に塗ると鉄が錆びるらしいので気をつけてください。
 

無垢フローリングのメンテナンス

無垢フローリングのメンテナンスは、

  • 乾拭きする
  • 年に数回、あるいは数年に1回、塗料を塗り直す。
    (この場合最初に塗ったものと同じものを使用しないと、化学反応が起きる可能性があります)

メンテナンスで床材の「あばれ」の程度を軽くしたり、無くしたりする事はできません。 また、汚れが目立ってきた部分は紙ヤスリ等で表面の汚れを落すことはできますが、仕上げ塗料も削り取る事になるので、塗料を塗り直す準備は必要です。

  • ※注意:合板フローリングを紙ヤスリ等で削ると表面の化粧部分が無くなって、下地のベニアが露出するのでやめましょう。 合板フローリング表面の化粧部分の厚みは一般的には、0.15〜0.3mm程度しかありません。
     

無垢フローリングと床暖房との相性

無垢フローリングと床暖房との相性は、基本的に良いとは言えません。 この組み合わせを行なう事はちょっとした冒険とも言えます。 冬期はただでさえ床材が「あばれ」やすい(縮んで反りやすい)時期なのに、下から熱せられる事でよりその現象が助長されるからです。

床暖房だけでなく、床面に吹出し口のある暖房機を使う場合も、熱風が出てくる吹出し口の前の部分はあばれやすくなります。 この場合は、吹出し口の前に小さな敷物を置けば多少違います。

ちなみに、当事務所で設計・監理し2001年6月に竣工した「町田 St邸」では、無垢フローリングと温水型床暖房の組み合せを行なっていますが、竣工後 約4年半 経過した2005年11月の時点では多少のひび割れが発生したものの、致命的な大きな問題は発生していません。 施工した大工さんの経験・技量と、フローリングの施工時期が良かった事(中間期である5月頃に施工)も幸いしているものと思います。

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無垢フローリング材は、合板フローリングに比べ、見た目の良さや質感が格段に良く、とても魅力的な材料です。 しかし合板フローリングよりも材料の値段が高く、張り手間や塗装代が多くかかるため、施工コストは合板フローリングの数倍です。 また「あばれる」という宿命も持っているので、使っていく上である程度の「心構え」が必要かもしれません。 その事をクライアントが十分納得できた上でないと、実際の床材として使用する事は避けた方が良いと思いますが、実際にムク材の床で生活を始めると、ラフに使って多少暴れたり、キズがついてもあまり気にならないという人は案外多いかもしれません。 使い込むほどに独特の質感と深みのあるツヤが出てくるので、材料に対する愛着が増してくるのは間違いありません。 数十年の長いスパンで見れば、良い選択肢となると思います。

(2001.05.14・2006.02.23追記)

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