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山尾建築設計事務所
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アドバイス
B 06車イス対応のリフォームについて
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車イス対応のためのリフォームで気をつける事

以前に「家族が車椅子の生活になってしまいました。道路から玄関が高い(約1.5m)のですが、対策はありますか?」という質問をいただいた事がありますが、その際に私がアドバイスした内容を書いています。

一戸建て住宅で車椅子対応のリフォームを行なう場合、室内外共に床の「段差解消」を配慮する必要があります。 道路から室内床との段差解消は、屋外部分だけを見ていてはいけません。 また、出入り口部分(玄関等)は大きなポイントとなるのですが、車椅子の使用といってもいろいろで、

  • 屋外と室内共に同じ車椅子を使用する場合
  • 屋内外で違う車椅子を使用する場合
  • 室内では介助歩行またはつかまり歩きができる場合
  • 自力走行ができる場合、あるいは介助者が必要な場合

などのケースがあり、「段差解消」の問題にとどまらず、玄関ひとつとっても必要な広さやしつらえについて、いろいろと設計の条件が異なってきます。 ここではとても全てを書くことができませんので「段差解消」に的を絞って書きますが、必要な配慮は「段差解消」だけではないということに気をつけてください。

  • 一戸建て住宅で「段差解消」をする必要のある部分
    1. :道路と玄関タタキの間の段差解消
    2. :玄関タタキと室内床の段差解消
    3. :室内床の段差解消(建具敷居・和室と洋室の段差・浴室のドア段差 他)

いただいた質問では、道路と玄関の間の段差解消についての質問なので、上記1と2について述べます。
 

1:道路と玄関タタキの間の段差解消

 道路と玄関タタキの間の段差解消については下記2つの方法があります。

1-a:スロープによる段差解消

  • 車椅子用にスロープを設ける場合、スロープの有効幅は最低1m以上、1/12から1/15勾配の緩いスロープを必要とします。 これは車椅子を利用する人が自力でスロープを使用できようにするためです。 1/12勾配は1m上がるのに必要な平面距離が12m必要で、1/15勾配は1m上がるのに必要な平面距離が15m必要となります。 1.5mの段差をスロープで解消する場合、18m(1/12勾配)から22.5m(1/15勾配)もの長さのスロープが必要となります。
     
    また、道路面からいきなりスロープを始めるのではなく、1.5m程度の水平面を設けておかないと、スロープを降りてきた車椅子が道路へ飛び出し、車や歩行者等と接触する危険があります。 側溝や縁石の段差にも注意が必要です。 また、玄関扉を出てすぐにスロープが始まるというのも危険です。
     
    このように、1.5mもの段差をスロープで解消するというのは、よほど敷地の大きさに余裕がないと難しいかもしれません。 しかし車椅子用のスロープは、車椅子を必要としない方(足の弱った高齢の方や、歩行に杖などが必要な方等)にも有効な場合があります。 また、打ち合わせの時など事前に簡易なスロープを作ってもらい、勾配を実際に確認する事も必要ではないかと思います。
     

1-b:段差解消機・階段昇降リフトによる段差解消

  • 長いスロープを敷地内に設ける事ができない場合、小型の昇降機や階段昇降リフトを使えば段差を処理できます。
     
    下図の
    「段差解消機」は車椅子に乗ったまま乗り込めるステージがあり、自分で操作する事ができます。 電動式と手動式がありますが、種類が多く使い勝手が良いのは電動式でしょう。 屋外設置を前提とした製品も多いようなので玄関の外に設置する事ができますが、使用する際の事を考えて屋根がある方が良いと思います。 段差の高さにより本体価格が変わりますが一般的に高価です。 今のところ介護保険からの補助は出ないようです。 また機械の設置スペースの他に、乗込み用のスペースや回転スペース等が必要となります。 転落防止や子供のいたずら等への配慮や安全対策も必要です。
<段差昇降機の一例>
  • 下図の「階段昇降リフト」も車椅子に乗ったままの操作ができ、使用しない時にはステージを折り畳むことができる製品もありますが、屋外設置型の種類はそう多くないかもしれません。 必要な有効幅があればという条件付きですが現在の階段は残しておけるため、場合によっては工事が簡単に済むかもしれません。 しかし壁にレールを取り付けるため、この壁はある程度の強度が必要となります。 また、途中で踊り場のあるような階段や、踊り場で折り返しになるような階段にも対応できる製品もあります。 
<階段昇降リフトの一例>
  • 機械を導入する際の注意点としては、故障の際やメンテナンス等に後々コストがかかる事に気をつけてください。 このような機械類を専門で扱っているメーカーがあるので、直接お問い合わせください。
     

2:玄関タタキと室内床の段差解消

車椅子が使用できる玄関とするためには、上がり框の段差を無くしてしまう事が必要です。 数cmの段差であれば、断面が3角形の角材等を設置して簡易スロープとする事もできますが、一戸建て住宅の場合通常20〜30cm程度の段差があると思います。 この場合、玄関のタタキの部分を室内床と同じ高さまで上げなければなりません。
  

2-a:玄関床の高さをあげるための工事を行なう

  • 上がり框の段差解消を行なうには、玄関床の高さをあげるための大掛かりな工事が必要となります。 玄関ドアの取付け直し、あるいは交換も必要となります。 ドアの取付高さが変わってしまうからです。 また、現状が開き戸の場合は引戸に変更する必要もあります。 上げた後の玄関床面はタイル貼り等として、室内床と仕上げを変える事で体裁は整います。
     
     玄関の段差解消は、車椅子を必要としない方(足の弱った高齢の方や、歩行に杖などが必要な方等)にも有効で、安心して使える玄関となります。
     
     車椅子を使用する玄関の広さや配慮については、ケースバイケースで異なってきます。

2-b:玄関用段差解消機

  • 玄関の床の一部がせり上がるような機械を設置する事もできますが、機械本体を床に埋込む事になるため、以外と工事費用がかかりそうです。 屋外部分でスロープ設置、あるいは段差解消機を導入するなら、玄関床を上げる工事も一緒に行なっておく方が、使い勝手も良いと思います。
<玄関用段差昇降機の一例>

2-c:居間や寝室からの出入り

  • 玄関の段差解消が諸条件でどうしても困難な場合居間や寝室の掃出し窓(テラス窓)からの出入りを検討してみるのも良いでしょう。
     

道路と室内床との高低差を解消するリフォームをせっかく行なうなら、道路面から室内床まで一気に昇降できるよう計画するべきだと思います。 使いづらい複雑な計画は、車椅子を使用する方の精神的な負担となり、行動範囲を狭めてしまう危険もあります。

いずれにしても、今回のような車椅子対応へのリフォームは、車椅子を必要としない健常者が想像する以上の細かな配慮が必要となりますので、この辺の事情に詳しい設計事務所等へ相談される事をお勧めします。 当事務所でも相談をお受けします。

(2001.05.10)

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